老犬の歯周病ケアについて 治療と予防

3歳以上の犬の約80%が歯周病になっているといわれていますが、最近の報告により歯周病菌の毒素は血流に乗って全身に回り心内膜炎や心臓弁膜症、肝炎、腎炎などの様々な病気に影響することがわかってきました。

特に老犬の場合は慢性疾患をもっていることが多く、それを重症化させないためにも歯周病について飼い主さんがよく理解しておくことは大切です。そもそも犬の歯の構造って?

成犬の歯の数は42本あり、構造自体は人間と同じで表面からエナメル質、象牙質、歯髄となります。

また、外から見える歯の部分は歯冠(しかん)、歯肉に隠れた部分は歯根と呼ばれて歯根部分はセメント質が象牙質を保護しています。

この「セメント質」と歯を支えている骨である「歯槽骨」、歯槽骨と歯根との間にある薄い膜の「歯根膜」、そして「歯肉」を合わせて歯周組織といいます。

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歯周病とは?

もともと犬の口の中には300〜800種類の細菌が存在していますが、その中でもPorphyromonas gulae、P.salivosa、P.denticanisなどの歯周病原性細菌と呼ばれる菌類が異常に増殖して歯周組織に入り込むことによって引き起こされる疾患を「歯周病」といいます。

症状として軽度の段階では口臭や歯肉が赤くなって腫れてくる「歯肉炎」、中度では歯肉の赤みや腫れがひどくなるとともに出血や痛みが起こる「歯周炎」、そして重度になると細菌が歯根周囲の骨や皮膚までも溶かして口の中や皮膚に穴が開くなどの状態が見られるようになります。

診断を行うには口内の状態を眼で確認する視診だけではなく、全身麻酔が必要となりますが歯科用のレントゲン検査などを使用するほうがより正確な状態を確認することができます。

老犬における歯周病の治療

歯周病の治療は基本的には「全身麻酔」が必要となります

飼い主さんの中には老犬に全身麻酔を行うことに対して不安感や抵抗感をもつ方もいると思いますが、術前検査によって問題が無ければそれほどリスクの高い処置と捉える必要はないと考えられます。

かかりつけの獣医師とよく相談して、疑問点などがあれば納得できるまで説明を求めるようにしましょう。

歯垢・歯石の除去

歯周病の状態がごく軽度ならば口の中を洗浄して主に歯垢・歯石を除去する「スケーリング」のみで処置が終わることもあります。

超音波スケラーやハンドスケラーなどの歯科処置専用の器具を使って歯垢・歯石の除去を行い、最後に歯石の再付着を防ぐためポリッシングブラシおよびラバーカップという器具で歯の表面を研磨し、滑らかに仕上げをして完了となります。

外科治療

本格的な歯周病の治療としては上記のスケーリングに加えて重度に炎症のある歯周病の歯を抜いてしまう抜歯や、歯肉を切開して症状のある部分を取りのぞいてから歯肉を縫合する歯周外科治療などの外科治療を実施します。

投薬などによる対症療法

持病などの関係で全身麻酔による処置が難しい老犬の場合は、「抗炎症剤」や「抗菌剤」、「鎮痛剤」などを使用して歯周病による症状の緩和を行う対症療法が適用となる場合もあります。

老犬における歯周病の予防

老犬に限らず、一番の歯周病の予防は「歯磨き」となります。犬では3~5日程度で歯垢が変化してしまうため可能ならば毎日1回は歯磨きを行うことがベストといえるでしょう。

ただ、今まで歯磨きを行ったことのない老犬の場合はなかなかスムーズに歯磨きをさせてくれないことも多いため、その場合は獣医師と相談の上で口腔ケアが期待できるサプリメントの投与などを行っても良いでしょう。

老犬の歯周病ケア

老犬だから歯周病の治療はできないと諦めてしまうのではなく、気になる症状が見られたらすぐにかかりつけの動物病院に相談してみてくださいね。

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